【独り言】~インボイス,手続関係どうなんの?2~
こんにちは。
税理士の越智満です。
再びインボイス制度の細かな手続部分を次回に…
と前回の独り言を締めていたので,再びインボイス制度の手続部分のお話ですが,
かなり久しぶりの【独り言】でして・・・
その間にインボイス制度に関する改正が入ったので,
今回は,
1 改正点について
2 自動引落の場合はどうなるのか
3 登録事業者の確認はどうなっているのか
をみていきます。
1 改正点について
改正点のなかから影響が大きそうな2点を抽出してみました。
改正① <小規模事業者の2割特例>
この改正は
「インボイスの登録をしなければ免税事業者だったのに・・・」という事業者の方が対象で,
「本来免税なんだったら,預った消費税の2割を納めたら良いよ」という改正です。
預った消費税の何割を納めるというと,
簡易課税制度がありますが,
簡易課税制度とは異なり,
事前に特例を使う旨の申請は不要で,
申告の際に特例を使うことを記すだけなので使いやすいですし,
卸売業・小売業以外であれば,
納税額が簡易課税制度より低くなるので,
対象の方は検討必須です。
ただし,この特例は令和8年9月30日を含む課税期間(計算期間)までしか使えないので,
個人事業の方であれば令和8年までの特例ということになります。
その後は,原則的な納税方法か簡易課税制度を選択することとなります。
簡単にいうとこんな感じですが,
国税庁の「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問111に詳細があります。
改正② <登録申請時期の変更>
インボイス制度スタートまでに番号をもらうためには,
令和5年3月31日までに申請するよう国税局から通知がなされていたのですが,
令和5年9月30日までに申請すれば,
登録日に関係なく,インボイス制度スタートから適格請求書発行事業者になれることになりました。
「ギリギリまで悩んで申請しても大丈夫ですよ」といったところでしょうか。
ただ,ギリギリに登録申請をした場合,
申請から登録日までは1ヶ月半以上かかるので,
登録されるまでは適格請求書でない請求書を発行し,
登録された後に遡って適格請求書を発行するという二度手間が発生しますし,
取引先も混乱すると思いますので,
あんまり推奨できないですね。
遅くても,お盆頃までにはどうするか決めておきたいところだと思います。
登録申請時期については,
国税庁の「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問7に詳細があります。
2 自動引落の場合はどうなるのか
駐車場や事務所の家賃など,
一度契約をすると後は口座からの自動引落しで領収書がない支払いがあると思います。
「大家さん大変です!毎月インボイスを発行しなければいけません!」
となると大変なので,
契約書に請求書や領収書に記載しなければいけない事項を表示しておけば,
今までどおりの取扱いで大丈夫となっています。
具体的には,
・賃料のところに消費税率と消費税額を表示しておく
・事業者の氏名または名称の下に登録番号を表示しておく
追加はおそらくこの2点ですが,
事前に税務署又は税理士に確認しておいた方が安心かもしれません。
なお,
「契約書だけならいつ支払ったかがわからないのでは?」
という疑問が残るのですが,
適格請求書は「複数の書類を併せて必要事項の記載があれば良い」ともなっているので,
今回は,契約書と引落口座の通帳を併せて保存していれば大丈夫となります。
なんともややこしい・・・
※ 注意点
駐車場の賃貸の場合,
大家さんが免税事業者ということがあると思います。
この場合,
大家さんは適格請求書発行事業者の登録をしなければ,
インボイスの発行はできませんのでご注意ください。
簡単にいうとこんな感じですが,
国税庁の「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問93に詳細があります。
3 登録事業者の確認はどうなっているのか
「支払先がインボイスの登録をしているか分からないので,
国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで検索してみよう!」
と思っても,
登録番号が分からないと検索できない仕組みになっています。
支払先が個人事業の方であれば,
番号を知らせてもらわないと分からない。
支払先が法人であれば,
国税庁の法人番号公表サイトから法人番号を確認して,
登録番号検索ができますがちょっと手間がかかる。
と,こんな状況です。
なので,
登録番号を取得した場合は,
売上先にお知らせした方がよいとされています。
お知らせの方法は自由ですが,
文書を作って郵送手配するのは地味に大変ですので,
令和5年10月1日より前から,
請求書や領収書に登録番号を書いておくという方法が一番簡単だと思います。
いずれ請求書や領収書に登録番号を付け加える必要があるので,
先にやっておこうという感じです。
登録番号はインボイス制度開始前から記載していても全く問題ありませんので,
既に請求書に登録番号を記載されている事業者の方もいらっしゃいます。
お手元の請求書や領収書に「T××××××××××××」と書いていないか,
探してみてください。
登録番号の記載時期については
国税庁の「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問74に詳細があります。
今回もまた長くなってしまいました・・・
この度の改正点については,
免税事業者への負担を少し軽減する内容ですが,
令和4年12月にほぼ内容が決まっていたので
国としては「登録者数を増やして予定どおりスタートしたい」という考えなんだろうなと感じました。
その影響もあってか,
令和5年3月末時点で課税事業者の9割は登録申請が完了しているそうです。
※ いずれも令和5年5月時点の取扱いとしてご覧ください。