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【雑談】お金のトリビア~明日使える(かもしれない)無駄知識~

お世話になっております,弁護士の小見山です。

前回まで相続の話を徒然なるままに書き連ねてきましたが,
今回は箸休め的な意味を込めて,
ちょっとした豆知識的なお話です。
おそらく知らなくても困ることはないですし,
知っているからといって,
おそらく同僚や後輩に飲み会でちょっとしたドヤ顔ができる程度にしか
役に立つこともないかとは思いますので,
お忙しい方は,この時点でブラウザバックすることを推奨いたします。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいんですか?本当に役には立ちませんよ??

よろしいようなので,話を進めますね。

さて,前回までお話してきたとおり,
相続とは,要するに相続財産を相続人や受遺者で分けることなのですが,
実際の分割の際には少し困った事態に陥ることがままあります。
例えば,1000万円の現金を3人で仲良く分割するという話になったとしましょう。
ところが,困ったことに,
1名当たりの具体的相続分が333万3333.3333333・・・円という計算結果になってしまいます。
切り捨てれば333万3333円になりますが,
相続財産は1000万円なので,1円余りが出ます。
あるいは,1000万0001円の相続財産を2名の相続人で分割する場合,
1名当たりの具体的相続分は500万0.5円となってしまい,
四捨五入すると500万0001円,合計1000万0002円となりますが,
相続財産は1000万1円しかありませんから,1円不足してしまいます。
その他にも,交通事故の損害賠償請求などでは,
遅延損害金といって,要するに延滞料みたいなものを支払うことがありますが,
法定利率は年3%ですので,100万円に対する半年分の遅延損害金は,1.5円になり,
同様に端数が生じることがあります。

さて,どうしましょう。
相続の場合は,遺産分割協議により,
どなたかが1円多くもらう形で合意が形成できれば問題ありませんが,
遅延損害金の0.5円は切り捨てるのか繰り上げるのか・・・。
たかが1円,されど1円です。

端数の処理について,法律は何か決めているのでしょうか。
答えは,イエスです。
該当する法律は,
  「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」
といい,同法第3条第1項は,
 
 債務の弁済を現金の支払により行う場合において,その支払うべき金額(数個の債務の弁済を同時に現金の支払により行う場合においては,その支払うべき金額の合計額)に五十銭未満の端数があるとき,又はその支払うべき金額の全額が五十銭未満であるときは,その端数金額又は支払うべき金額の全額を切り捨てて計算するものとし,その支払うべき金額に五十銭以上一円未満の端数があるとき,又はその支払うべき金額の全額が五十銭以上一円未満であるときは,その端数金額又は支払うべき金額の全額を一円として計算するものとする。ただし,特約がある場合には,この限りでない。

と定めています。法律の条文ってやたら長いですよね。
要約すると,「原則四捨五入だぜ!別に決めてりゃそれ次第☆」と書いてあります。
ということは,先ほどの例で言えば,遅延損害金における0.5円は繰り上げることになるので,
1.5円は,2円になるということですね。少し得した気分です。
他方で,あくまで「債務の弁済を現金の支払により行う場合において」なので,
相続など純粋な計算の場面では,先ほどの例のように,必ず繰り上げなきゃいけないとなると,
相続財産の総額と整合しない場合がありますから,
四捨五入しなきゃいけないということではありません。

さて,今の説明を聞いて,経理をご担当されている方など,
税金の計算で同じような端数に出会うことが多々あるかと思いますが,
疑問に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
四捨五入じゃなくて小数点以下は切り捨てではなかったかしら?と。
実は,先ほどの法律の第3条第2項には,

 前項の規定は,国及び公庫等(国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律(昭和二十五年法律第六十一号)に規定する国及び公庫等をいう。)が収納し,又は支払う場合においては,適用しない。

と定めてあります。税金なんかは正に国が収納する場面ですから,
四捨五入の原則は適用されないんですね。
税法上の端数の取扱いが具体的にどうなっているのかは,
きっとどこかの税理士さんが教えてくれるでしょう。笑

ちなみに先ほどの「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」ですが,
第7条には,
  貨幣は、額面価格の二十倍までを限り,法貨として通用する。
と定めてあります。
貨幣の強制通用力の範囲を定めたものですが,要するにお金として使える枚数の限度を決めています。
実は,1円玉から500円玉は,最大でそれぞれ20枚までしか使えないのです。
ですから,小銭で支払える限界は,
  1円玉  ・・・   20円
  5円玉  ・・・  100円
  10円玉 ・・・  200円
  50円玉 ・・・ 1000円
  100円玉・・・ 2000円
  500円玉・・・10000円
の合計1万3320円ということになります。
コンビニで大量の小銭でたばこやらを買おうとされるお客さんを見ると,
小職は心の中で「21枚目以降はお金として認められないぜ・・・」
なんてことを思ったりせずに,おそらく「早く会計済ませて欲しいなぁ」とか思っています。

ところで,皆さんご存知1万円札ですが,
30万円のお買い物をする場合,
1万円札を20枚以上使いますよね。
あれ?お金は20枚までじゃないの?と思った方は鋭いです。

実は,お札はまた取扱いが異なります。
というのも,先ほどの法律でも「貨幣」とあり,
1万円札などのお札は含まれていないのです。
先ほどから「お札」と呼び,「紙幣」とは言っていませんが,
通貨の種類としては,「紙幣」というのはありません。
え?いやいや,1万円あるやん。自動販売機に「紙幣入口」とか書いてあるやん
って思う方もいらっしゃるかもしれませんが,
先ほどの「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」第1条第3項には,

  第一項に規定する通貨とは,貨幣及び日本銀行法(平成九年法律第八十九号)第四十六条第一項の規定により日本銀行が発行する銀行券をいう。

と定めてあります。
「お札」は「紙幣」ではなく,「日本銀行券」といい,国が発行する紙幣ではないのです。
お札にもしっかりと「日本銀行券」と書いてあるので,ぜひ一度確認してみてください。

さらに,日本銀行法という法律の第46条を見てみると,
  
第1項では,
    日本銀行は,銀行券を発行する。
と定め,続けて第2項では,
    前項の規定により日本銀行が発行する銀行券(以下「日本銀行券」という。)は,法貨として無制限に通用する。
と定めています。
「無制限に通用する」とあるので,貨幣と異なり,
20枚を超えようがお金として無限に通用するわけです。
まぁいくら通用力が無制限でも
所持金は無制限じゃありませんがね・・・

とまぁ普段当たり前のように触れている「お金」ですが,
実は,法律でしっかりと色々と定めているんですね。
このように我々が当たり前のように暮らしている生活の裏側には,
法律によって色々と取り決めがされているんだなぁと思っていただけたら,
今回の投稿の目的は概ね達成です。

いかがでしたでしょうか。以上,明日使える(かもしれない)無駄知識でした。

  令和4年8月吉日
                弁護士 小見山 岳