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【雑談】株式はツラいよ

お世話になっております,弁護士の小見山です。

昨今,超少子高齢化社会なんて言われておりますが,
相続関連の相談が増えてきているように感じます。
相続関連の相談の中では,
遺産分割でもめているというのが典型的ですが,
中には亡くなった時のことを考えて,
遺言を作成しておきたいという方もいらっしゃいます。

遺言に関する弁護士の仕事は大きく2つ。
一つは,遺言書の作成。
もう一つは,遺言執行です。
遺言の作成については,またいずれお話ししますが,
文字どおり遺言書の作成をお手伝いをすることです。
遺言執行は,亡くなられた後に遺言の内容を実現することで,
遺言書の中に誰々を遺言執行者に指定するということを記載しておきます。
そういう意味では,遺言執行は遺言書の作成とセットで受任することになります。
ちなみに一般的には,遺言は「ゆいごん」と読むと思いますが,
法律上は「いごん」と読みます。
ですから,遺言執行は,「いごんしっこう」と読みます。
その他にも「兄弟姉妹」は「きょうだいしまい」ではなく,
「けいていしまい」と読むなど,
法律上の呼称が一般的なものと違うことはよくあったりします。

少し脱線してしまいましたが,
遺言書には遺言者が亡くなられた後に
財産をどのように振り分けるかということが書かれているわけですが,
当然ながら亡くなれた方は実際の振分けをすることはできません。
ここでいう「振分け」というのは,
例えば,土地の名義を変更したり,預貯金を解約したりといったことです。
こういった遺言の内容を実現するのが「遺言執行」です。

遺言書を作成する方はある程度の財産を有している方が多いので,
不動産や預貯金の他に株式を保有していらっしゃる方もいます。
不動産は司法書士に依頼して名義を変更しますし,
通常の預貯金であれば解約して,
残高を管理口座に入金すればすればいいわけですが,
株式の場合は手続が少し大変。

単元未満株式(1単元が100株なら100株未満)の場合であれば,
株式名簿を管理している会社において,
買取りしてくれるため,
承継人が売却を希望すれば売却して,
その代金を管理口座に入金してもらいます。
単元以上の株式の場合には承継人に株式の名義変更をするか,
一旦遺言執行者名義に変更した上で売却します。

なんだ簡単じゃないかとも思えますが,
書類を提出する株主名簿管理会社(信託銀行など)が,
山口県内にはないため(最寄りで北九州……),
少し大変なのです。

なぜ近くにないと大変なのかというと,
戸籍謄本や遺言書の原本(コピーでない本物)を提出する必要があるからです。
戸籍は費用がかかるものの,何通か取り寄せれば足ります。
ところが遺言書の本物は1通しかないのです。
もちろん郵送でも手続はできますが,複数の株式がある場合には同時並行で進めることができません。
株式関係の手続は,申請から大体1か月半くらいかかります。
そうなると,保有銘柄が複数あるととても時間がかかってしまいます。
そのため,最寄りの支店に行って原本確認をしてもらい,
その場で還付を受けて,別銘柄のために別の支店へ……というのが最も早いわけです。

コロナ禍において県外に移動しなければならないのはなかなかリスクがありますし,
最寄りの店舗と本店が連係が取れていないところだと窓口での確認に時間もかかります。
先日,裁判のIT化というお話をしましたが,
本人確認や書面の原本確認なども将来的にIT化が進めば,
事務所にいながら手続が可能になったりしないのだろうかと思いつつ,
手続書類を作成するのでした。

令和3年3月1日
             弁護士  小見山 岳