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【独り言】~インボイス,免税事業者いなくなる?~

こんにちは。
税理士の越智満です。

インボイス制度の詳細を次回に…
と前回の独り言を締めていたので,インボイス制度の詳細のお話です。

インボイス制度の導入は,
「預り金である消費税を免税事業者にもしっかり納めてもらおう!」
「ついでに請求書のルールをもうちょっと整備しよう!」
といった消費税法の改正です。

 
ではでは,
内容を見ていきましょう。

インボイス制度が導入されると
消費税の原則的取り扱いの
「商品の仕入や家賃や水道光熱費等として支払った消費税(B)」
の部分がより厳密になり,
「商品の仕入や家賃や水道光熱費等として適格請求書発行事業者に支払った消費税(B)」
に変わります。
これをみると,
「適格請求書発行事業者に」という言葉が追加されているので,
消費税の計算上の控除をもらうためには「誰に支払ったか」が重要になってきます。

そもそも,この適格請求書発行事業者とは
 消費税を納める事業者で,
 国税庁に適格請求書発行事業者の登録申請をして,
 登録番号をもらった事業者
を言います。
なので,消費税を納めていない免税事業者は,
適格請求書発行事業者になれません。

今の制度では,
事業を開業したばかりの個人事業の方や
設立したての法人等,
消費税の免税事業者に商品やサービスの対価を支払えば,
仕入税額控除の対象となりますが,
インボイス制度が導入されると,
免税事業者に支払った対価は,
仕入税額控除の対象から除かれることになります。
この免税事業者に支払った金額のうち仕入税額控除の対象から除かれる金額は
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの3年間が20%,
令和8年10月1日から令和11年9月30日までの3年間が50%,
令和11年10月1日からが100%
と,徐々に増えていきます。

「免税事業者に消費税を支払っても追加でさらに納税してね」
と言われているようなものです。

この影響により,
消費税を納める課税事業者からすると,
同じ金額を払うなら
適格請求書発行事業者に支払ったほうが消費税の納税金額が少なくなります。
なので,
免税事業者と取引をしている場合には,
今まで通りなら負担が増えるため,
負担が増える消費税相当額の値引き交渉や,
取引業者を変更するということが想定されます。

反対に,
免税事業者からすると,
売上の値引き交渉を受けるか,
売上先との取引がなくなる可能性があります。
これについては,
消費税を納める課税事業者になり,
適格請求書発行事業者の登録をすれば,
回避することができます…

ということで,
免税事業者は
① 売上の一部又は全部を失う可能性
② 消費税を納める
のどちらかを選択することになりますので,負担が増える可能性が高いでしょう。

もし,
①を選択して,
値引き交渉で消費税全額の値引きを求められて承諾した場合は,
 消費税相当額の約10%売上が減少
②を選択して
消費税を納める課税事業者になった場合には,
原則的方法なら
 預かった消費税から支払った消費税を差し引きして余った金額を納税
例外的方法(簡易課税)なら
 預かった消費税の何割かを納税
となるので,
消費税の申告をするという手間は増えますが,
10%丸々売上が減少するよりは,消費税を納めた方がまだ手元に残る金額が多くなります。
そのため,多くの免税事業者が消費税を納める課税事業者を選択すると考えられます。

ただ,「売上先が全て消費者」と言う事業を行っている場合は,
消費税の値引き交渉をしてくる人はいないため,
インボイス制度が導入されるからといって,
免税事業者から課税事業者に変わる必要がないので,
「免税事業者がいなくなる」
とまでは言いませんが,
免税事業者はかなり少なくなると想定されます。

具体的にどのような選択が有利かは,
帳簿をみながらでないと分かりませんので,
その際は,税理士に相談をしてみてください。

  

ところで,適格請求書発行事業者の「適格請求書」とは…
今までの請求書と何が違うのか?
請求書が変わるのかな?

このあたりの細かな手続部分を次回に…