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【雑談】遺言で残したのは遺恨?~遺産相続あれこれ3~

お世話になります,弁護士の小見山です。

何だかんだ3回目の遺産相続あれこれですが,
こんなに長くなるとは思わず,
果たしていつ終わるのか,タイトル回収はいつになるやら。
小職も不安ですが,とりあえず前回からの続きから。

前回,推定相続人が誰になるのかという誰でも知ってそうなことを
長々とお話させていただきました。
今回は,推定相続人の他に追加メンバーの加入もできますぜ,なんて話です。

さて,推定相続人が決まったら,
その人たちだけで遺産を分けるしかないのかというと,
そういうわけではありません。
前回申し上げたとおり,推定相続人以外の方にも遺産を分けたい,
そんな時に利用されるのが「遺言」です。
従前の投稿でもご説明したことがありますが,「いごん」と読みます。

遺言で推定相続人以外の方に遺産を分けることを「遺贈」といい,
遺産を受け取る側を「受遺者」といいます。
遺贈も相続と同様に,
まるっと承継させる包括遺贈と,
特定の財産のみ承継させる特定遺贈があります。
まるっと承継させる包括受遺者は,相続人と立ち位置が似ていますから,
イメージとしては,
監督(民法)が選んだメンバーが推定相続人で,
ファン(被相続人)投票(遺言)で選ばれたメンバーが包括受遺者といったところでしょうか。
あるいは,買い物した後のレジ袋をイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。
買い物袋に入った商品が個々の相続財産で,
レジ袋が被相続人の地位です。
特定遺贈は,レジ袋の中の商品のいずれかをもらえるだけですので,
渡して終わり。レジ袋は持てません。
他方で,相続人と包括受遺者は,いわばレジ袋ごと商品を把握できるわけです。

ちなみに,遺贈と似て非なるものに「死因贈与」というものがありますが,
死因贈与は,あくまで死亡を条件とする契約であって,
贈与する側とされる側の合意によって成立しますが,
遺贈は,遺言者の一方的意思表示といった違いがあります。
流れで話しましたが,「へぇ~」と思って死因贈与のことは忘れてください。

さてさて,誰が相続人か,あるいは包括受遺者か決まれば,
続いて問題になるのが,
誰がどれだけの地位をどうやって承継するのかということです。
各相続人が承継する持分のことを「相続分」といいますが,
「相続分」については民法が予め定めています。
民「法」が予め「定」めている「相続分」?
そうです,これを「法定相続分」なんて呼びます。

誰が相続人かによって法定相続分が異なるのですが,
パターンは相続順位によって3つ。
前回投稿でご説明したとおり,配偶者は常に相続人となるので……
その1,配偶者(1/2)+子(1/2)
その2,配偶者(2/3)+直系尊属(1/3)
その3,配偶者(3/4)+兄弟姉妹(1/3)
となります。配偶者強し。

我が国では重婚は認められていませんから,
配偶者は1人なので上記の割合となりますが,
それ以外の推定相続人は,複数いる場合があり得ます。
その場合は,原則として,上記の割合を人数で除して,個々の法定相続分を求めることができます。
例えば,被相続人の子が2人だった場合は,法定相続分1/2÷2=1/4が子1人当たりの法定相続分となります。
ただし,例外として,子のうち,いわゆる半血兄弟(被相続人の前妻又は前夫の子)については,
全血兄弟の半分になるので,上記の例で1人が前妻又は前夫の子だった場合,
子らの相続分は,全血兄弟が法定相続分1/2×2/3=2/6=1/3,
半血兄弟が法定相続分1/2×1/3=1/6となります。

何だか数字が出てきた途端ものすごくややこしくなりましたね。小職もそう思います。
いずれにしても,民法で決めているのは,「相続分」までなので,
結局,「どのように分けるか」という問題は解決してくれません。
この遺産を「どのように分けるか」ということを
「遺産分割方法」といいます。
少し分かりにくいかもしれませんが,
例えば,相続分が「2分の1」と決まっていた場合,
相続財産が現金のみである場合には,
相続分さえ決まっていれば,全体の半額をもらえばいいので,
「どのように分けるか」という問題になりません。
しかし,相続財産が現金1000万円と1000万円の不動産があった場合はどうでしょう。
合計2000万円分の相続財産の「2分の1」とまでは決まっていますが,
具体的な分け方としては,
現金全額をもらう,不動産全部をもらう,
あるいは現金500万円と不動産を半分もらう,という3つの方法が考えられます。
このように具体的に「どのように分けるか」というのが
「遺産分割方法」の問題です。
かかる遺産分割方法については,民法は何も定めていません。
というより,相続によって相続財産の内容は異なるので,
定めようがありません。
そこで,これらの問題は,相続人や包括受遺者が話し合って決めるしかありません。
この話し合いが皆さんご存知の「遺産分割協議」です。
遺産分割協議=なんかもめそう。というイメージがあるのは,
きっと小職だけではないはず。

ところがどっこい。
遺言は,法定相続分と異なる相続分を指定することができるのみならず,
遺産分割方法も指定できるのです。
つまり,誰に何を相続させるのか,ということも当然決められるわけです。
相続分を指定したのみでは,
殆どの場合,遺産分割協議が必要になりますが,
遺産分割方法まで指定しておくと,
もめる余地が少なくなります。
逆に,相続分のみを指定した遺言では,
遺恨が残る可能性があるということです。
遺恨を残さないために作成するのが遺言
と考えると,遺産分割方法まで指定しておく方がいいわけですね。

で,具体的には遺産分割方法を指定するためには,
どうやって遺言を書けばいいの?
という方は,ぜひ一度来所いただければと思います。
先ほど申し上げたとおり,
相続財産の内容によるので,一概にはお伝えできませんし,
ご希望の内容によっても,細かい表現が異なるため,
詳細については,直接お話しさせていただければと思います。

何かまとめに入ってるな?と思った方もいらっしゃるかもしれませんが,
残念ながら,もう少し続きます。

といいますのも,遺産分割方法の指定をしたとしても,
もめる余地が少なくなるだけであって,
もめる要素が他にも色々あるのです。
また,前回投稿で申し上げたとおり,
これを誰々にあげたい!というばかりではなく,
できれば誰々にはあげたくない,
あるいは,誰々にはこれだけしかあげたくない
といったことをご希望される場合が多々あります。
その場合に問題となるのが,「遺留分」。
遺産分割方法の指定の仕方によっても問題になります。
これまた聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが,
「いりゅうぶん」と読み,
要するに相続財産に対する推定相続人の最低保障みたいな制度のことです。

詳しくは,次回「遺言で残したのは遺恨?~遺産相続あれこれ4~」
お楽しみに~。

  令和4年6月吉日
                弁護士 小見山 岳