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【雑談】遺言で残したのは遺恨?~遺産相続あれこれ1~

お世話になっております,弁護士の小見山です。

近頃は気温も暖かく,春らしい日が増えましたね。
あれ。えっ,もう春?どうりで最近眠いなと思ったら……。
小職が春告魚の投稿をしてからもうすぐ1年が経つのかと思うと,
本当に時の経過は早いなぁと思うばかりです。

さて,随分前に遺言について話しますと言ったような気がしないでもないので,
今回は,遺言について徒然なるままに話をしていきたいと思います。
というのも,最近では通常の相談でも,市の無料相談や民事当番の相談でも,
以前にも増して相続関連の相談が多くなったと実感しています。
少子高齢化社会の当然の帰結でしょうし,
都心に比べ過疎化が進む地方は特にその傾向が強いのかもしれませんね。

相続の基本的知識なんかは,最近はネットも当たり前になったので,
ご存知の方も多いでしょうが,まずは遺言の前提として,
そもそも相続ってなに?という話から。

当然ですが,人が亡くなった時に生じるのが相続です。
亡くなった方を「被相続人」と呼び,
亡くなった方の地位を引継ぐのが「相続人」です。
相続というと,「遺産相続」と遺産を引継ぐものというイメージが強いと思いますが,
正確には,ただ今申し上げたとおり,被相続人の「地位」そのものを引ぎ継ぎます。
これを講学上「包括承継」といいますが,
読んで字の如く,その人の法的な権利や義務をまるっと承継するのが相続なのです。
相続の他にも,会社の合併なんかも包括承継と言われています。
これに対して,売買契約なんかは,
特定の物に対する所有権を譲渡し,その対価として金銭を受け取りますが,
その人の地位は引き継ぎませんよね。
コンビニで買い物したら,「今日からあなたが店長です。」なんて困ってしまいます。
なので,これらは包括承継と対比して,「特定承継」なんて呼ばれます。
要するに,相続は,人が亡くなった場合,
まるっとその人の代わりにその人の立場を引き継ぐものなわけです。
中には亡くなったその人だからこそ持っていた権利(これを「一身専属権」なんて言います。)
なんてものもあり,これは相続でも引き継がないのですが,
民法の講義ではないので,その辺はすっ飛ばします。

お気づきの方もいらっしゃる方もいるかと思いますが,
被相続人の地位をまるっと引き継ぐのが相続なので,
仮に被相続人に債務,要するに借金があれば,
これも相続で引き継ぐことになります。
なので,相続の相談の時には,
相続財産としてどんなものがあるかを尋ねる際には,
借入れがないかも確認します。
被相続人が個人事業をされていた場合はもちろん,
会社を経営されていた場合,
会社の借入れにつき連帯保証人になっていることも多いので,
かかる連帯保証債務も引き継いでしまうわけです。

マイナスを補って余りあるプラスの財産があれば良いですが,
マイナスの財産が多い(あるいはマイナスしかない)場合や,
一応相続人だけど親父の財産なんかいらん!という場合には,
「相続放棄」をすることにより,
初めから相続人でなかったことになりますから,
相続人だけど相続したくないという方は,
かかる手続を経る必要があります。

時々勘違いされている方がいらっしゃいますが,
先ほど申し上げた「相続放棄」は,
「私は遺産なんかいらん!」とどんなに大きな声で叫んでも全く効力は生じません。
相続放棄の効力を生じさせるには,被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し,
相続放棄申述申立書を提出し,これが受理される必要があります(詳しくはご相談を!)。
かかる手続を経ると「相続放棄申述受理通知書」というのが家裁から送られてきますので,
その通知書の案内に従って「相続放棄申述受理証明書」というのを,
家裁で発行してもらうことによって,
初めて「自分は相続人じゃありません」と証明できます。
いらんと言っているのに,どうしてそんな面倒な手続が必要なんや!
と思う方もいると思いますが,
先ほど申し上げたとおり,
相続はまるっと被相続人の地位を引き継ぐものであって,
相続放棄はその地位を捨てることに外ならないため,
慎重な手続が必要になるわけです。

他にも相続問題でよくご質問いただくのが「相続税」のこと。
この辺は,当事務所には優秀な税理士さんがいるので,
きっと相続税の基本的なとこやら,あれやこれやら教えてくれるでしょう……!ね!満先生!

さてさて,以上の話は,相続をいわば残された側,すなわち「相続人」から見た話ですが,
昨今の相談で多いのは,どちらかと言うと「被相続人」側です。
ん?被相続人って亡くなった方なのでは?あらやだ,怖い話?
と思った方はご安心ください,ここは法律会計事務所。
決してスピリチュアルな話ではなく,
現実の,どちらかというと経済的な話です。
といいますのも……
っと何だかんだ結構長くなってしまったので,続きはまた今度にしましょう。
(け,決してタイピングに疲れたわけでも,ましてや,ととと投稿回数稼ぎとかではないですからね!)

次回,「遺言で残したのは遺恨?~遺産相続あれこれ2~」
お楽しみに~!

          令和4年4月吉日
           
                       弁護士 小見山 岳