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【雑談】相続土地国庫帰属制度ってご存じですか?~不要な土地を相続した方へ~

お世話になっております,弁護士の小見山です。

年明けのご挨拶から投稿をサボっておりましたが,
ここのところ鼻風邪がずっと続いており……などとほのかに言い訳しつつ,
気づけばもう3月。花粉症の方は辛い季節の到来ですね。

最近,沖縄のとある島を中国人の方が購入されたとかで,
話題になっていましたが,
皆さんは,「土地を持ってる」と聞くと,
どのようなイメージを持たれるでしょうか。

当職は,幼少期に公務員の官舎住まいだったからか,
「土地持ってる=お金持ち!」というイメージでした。
しかしながら,当然ですが土地というのは,宅地ばかりではなく,
田や山林なんてものもございます。
この山林というのは,実はなかなかに厄介だったりします。
というのも,宅地であれば,通常は境界がはっきりしていますし,
少なくとも地番で場所を特定できます。
しかしながら,山林の場合,該当する地番を特定できても,
実際にどの辺りに存在するのかを特定できない場合があります。
そのような場合には,とりあえず公図を確認してみますが,
公図が存在しない山林もあります。
そんな時は,いわゆる森林簿を確認してみます。
山口県の場合には,農林水産部農林企画課が
「やまぐち森林情報公開システム」(https://forestgis.pref.yamaguchi.lg.jp/shinrintop/index_public.html)
を提供してくれているので,ここから森林計画図などを確認することができます。
ただし,これらはあくまで,
「地域森林計画の策定に必要な森林資源の把握」という目的のために作成されたものですので,
ホームページ上でも注意書きがありますが,
土地の面積や境界を示すものではないんですね。
それでも,大まかな山林の場所なんかを特定するのには役立ちます。
あとは実際に現地に行ってみるしかありませんが,
周辺住民の方々にお話を伺うと,
「この裏山は,あそこの●●さんのとこじゃなかったかね。」なんてお話が聞けることもあります。

さて,なぜ山林の場所が分からないと困るかというと,
相続の時に色々と大変なのです。
現実に問題に直面されている方も少なくないのではと思いますが,
山林があるのは知っているけど,どこにあるか分かりませんってことになると,
そもそもそんな山林なんか欲しくない,となりがちですし,
宅地と違って,山林ってそもそもなかなか売れませんし,
場所が分からなければ売ろうにも売れません。
そのため,誰が山林を相続するのか,
相続人間で激しい譲り合いの戦いになったりします。
譲り合いではありますが,
結局なかなか遺産分割協議自体がまとまらない
という事態に陥ってしまうわけです。

また,山林に限らず,子どもが都心に出たまま田舎に帰ってこないので,
田舎の親名義の土地について,現実に管理できないし,
できれば手放したいという,なんてパターンも最近多いように思います。
小職の過去の投稿を一読いただいた方の中には,
相続放棄があるやないかと思われる方もいらっしゃるやもしれませんが,
相続放棄は相続財産の一切を放棄することになりますから,
土地以外に預貯金なんかがあると選択しにくかったりします。
そんわけで,仕方なく相続したものの,
土地の処分に困ってしまう,ということが結構あるわけです。

以上のように処分に困った土地がどうなるかといえば,
大抵の場合が放置されてしまいます。

相続登記すら放置されると,
所有者が誰なのかを特定すること自体が難しくなります。
登記上の名義人から何世代も相続を経ていれば,
相続人が結構な人数になったりしますが,
その戸籍調査にはかなりの時間と労力を要します。

また,相続登記は経由したとしても,
現実の土地の管理ができていない場合,
すくすくと育ってしまった竹木が
お隣さんにお邪魔してしまったり,
場合によっては何らか構造物に傷をつけたりといった
近隣住民とのトラブルに発展する場合もありますし,
場合によっては管理不足による倒木で
ご近所さんがお怪我をさせてしまったなんて危険性すらあります。

そりゃいかんってことで,
令和5年4月27日から,
   相続土地国庫帰属制度
なるものが運用を開始します。
なんじゃそれ?という方も多いかもしれませんが,
詳細については,法務省の以下のリンクをご覧いただければと思います。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html

要するに,相続や遺贈により土地を取得した方が
一定の要件を満たすと,
該当の土地を国に譲ることができますよという制度です。
おぉ何て便利な制度だ!やるじゃん法務省と思いましたが,
その「一定の要件」というのがなかなかハードルが高かったりします。

まず,何より対象になるのは,「土地」ですので,
「建物」は含まれません。
そればかりか,その土地上に建物がある場合には,
そもそも申請自体が却下され,審査もしてくれません。
その他にも土壌汚染されていたり,
境界が明らかでない土地なんかも門前払いされてしまいます。
オーディションの書類選考でアウト的な扱いです。

また,仮に申請自体は受理されたとしても,
審査があり,崖があって管理に過分な費用・労力がかかる土地や,
地上や地下に除去しないと管理できない有体物がある場合など
通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地は,
承認されないようです。書類選考後の面接で不合格的な扱いです。

こうして審査をクリアした選ばれし土地であっても,
国がタダで受け取ってくれるわけではなく,負担金を納める必要があります。
具体的には,国庫に帰属させるには,
  10年分の土地管理費相当額
を納める必要があります。
「土地管理費相当額」は,
宅地や田畑は原則として地積にかかわらず一律20万円ですが,
区域等により例外的に地積に応じて算定する場合もあるようです。
また,森林なんかは,一律の金額は設定されておらず,
地積に応じて算定し,またそれ以外の原野や雑種地なんかは,逆に地積にかかわらず,
一律20万円となっているようです。
これで土地を手放せて,次世代に土地の問題を先送りせずに済むと思えば,
思ったよりは安いのではないかと感じましたが,
皆さんはどう感じられたでしょうか。
負担金については,先ほどご紹介した法務省のホームページに説明がありますので
気になる方はぜひご確認ください。
一応リンクも貼っておきます
↓↓↓
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html)。

制度の概要は以上のとおりですが,
国庫に帰属させるとしても,
何でもかんでも受け入れていたら,
結局,手が回らずに管理できないという本末転倒な事態になりかねませんから,
一定の要件を設けて,ふるいにかける必要はありますが,
それでもなかなかハードルが高そうですよね。

ただ,これまで相続放棄を用いて手放すしかなかったことを考えると,
運用次第では,それなりに便利な制度になるんではないかと期待しています。
まだ運用自体が開始されていないので何ともいえまえんが,
令和5年2月22日から,各地の法務局で相談もできるみたいなので,
相続などでいらない土地があるんだよなぁという方は,
お近くの法務局までお問い合わせいただければと思います。
もちろん,相続含めてお困りの際は,当事務所までお気兼ねなくご相談ください。

何だかんだ相続がらみの投稿が多いような気がしますが,
これも少子高齢化の影響ということにしといていただければ幸いです。
ではでは,長くなりましたが,これにて閉幕。また,いずれどこかで。

  令和5年3月吉日

              弁護士 小見山 岳